◆摂食障害の社会的認識と自己認識
摂食障害は精神的な健康問題の一つとして認識されていますが、一般的にその理解度はまだまだ不十分なところがあります。摂食障害が単なる「食べることへの意志の弱さ」や「ダイエットの延長」と誤解している人も多くいます。摂食障害と聞いただけで負のレッテルを貼られ、孤立感、自己否定感を強め、病状の悪化や社会的な孤立を引き起こす可能性すらあるのが現状です。
また摂食障害を持つことで自己認識も大きく変化させます。摂食障害の症状から自己肯定感が下がることで自己否定が繰り返され、心と体に掛かる負担がどんどん膨らんでいきます。自分はダメな人間だ、という自己意識が症状を悪化させてしまうのです。
◆摂食障害の暗闇から抜けるため、まず自己肯定感を見直す
自分自身の自己肯定感を変えていくのはなかなか難しい事ですが、僅かな意識を変えるだけでも効果的です。自己肯定感を高めることは、摂食障害から回復の道を辿るための重要なポイントになりますので日頃から意識してどんな時に自己肯定感が下がるのかをぜひ見直してみてください。
摂食障害の症状に振り回され、食事が苦痛になり、過食の衝動に苦しめられ、嘔吐が辞められなくなり、摂食障害の悪循環を繰り返して苦しんでいる日常の中で、前向きな思考を取り入れることはできないと思われるかもしれません。
それでもほんの少しだけ考えを変えてみる時間を作ってみてください。
どうしても食べられないときは、自分自身の身体の状態を見極めるチャンスだと捉え方を変えてみましょう。どうして食べられないのか、どうして食べてしまうのか、日記にその時の気持ちを言葉で残しておくのもおすすめです。
摂食障害によって繰り返す行動とその時の感情の変化の因果関係を知ることは自己肯定感を見直す一つの手段となるはずです。
どんな時に自己否定をしてしまうのか、どんな行動をした自分を許せないのか、まずは自分で自分自身を少しづつ知っていくことが自己肯定感を見直すための一歩になります。
◆自分と対話し前向きな自己肯定感を育てる
摂食障害の症状が出るときのことを考えてみてください。考えたくないことから逃れるために食べてないだろうか?何が自分をこんなに苦しめているのだろうか?
どうしてこんなに痩せることに執着する自分がいるんだろう?いつから摂食障害の症状が出始めたりだろう、その時の環境の変化は?
答えが簡単には出たら摂食障害にはなっていなかったでしょう。
人の行動には理由があります。脳は無意識にその理由に従っているのです。摂食障害を抱えている人たちはその問題となにかしらの理由で向き合えない状況に陥ってしまっているケースがみられます。
心と体と脳の指令がみんなバラバラの状態。
日常生活に支障をきたすどころか、人生までも壊してしまう。無意識に追い詰める【何か】があなたの中に詰まっているのです。
摂食障害で過度な食事制限をしていた拒食期、50キロあった体重が30キロ代まで落ちました。筋肉の機能が低下していたのか、歩くスピードが遅くなり、おしっこを我慢することすら出来なくなりました。
一日の食事は無糖コーヒー、フリスク、豆腐、生野菜。
身体が思う通りに動かないと自覚できた時に一気に飢餓感を感じ、覚醒したかのように過食が始まりました。
過食期に入ってからは自分が無価値な人間だと自暴自棄になったり
もうどうなってもいいと諦めの感情に包まれたり
生きていても仕方ない、と死を考えたりもしました。
自己肯定感はゼロに近かったと思います。自己肯定感をいきなり上げるのは普通の人間でも難しいことなのでまずは自己肯定感の低さと摂食障害の症状は関連しているという自覚を持ち、向き合うことから始めましょう。
言の葉と言いますが、言葉は口にすると勇気をくれたり前向きにさせてくれる力があります。まずは摂食障害を許容し自己否定するのを辞めましょう。
摂食障害の症状に悩んでいる方、家族や友人に摂食障害を抱えている人がいて接し方に悩んでいる方、どうか摂食障害をネガティブに考えないでください。
たったそれだけのことで少しずつ、変わっていくと信じています。
摂食障害は心に大きく関わる病です。
ポジティブにとらえることは難しいかもしれませんが
後ろ向きな感情を抱く時間からプラスは生まれません。
自己を肯定できない時は摂食障害を肯定してしまいましょう。
過食し、運動し、嘔吐し、自分ルールで動けている時は自己否定ではなく頑張っている自分を肯定しやすいはずです。
食べ物をテーブルに並べて獣のようにむさぼり食べていても、そのあとトイレに流してしまってもそれでいいんです。摂食障害の社会的ネガティブな認識を常識として考えずに向き合っていくべきだと思っています。
まずは自己肯定感をこれ以上下げないために摂食障害を肯定してしまってください。そこからゆっくりと、本当にゆっくりと自己肯定感は育てていけるはずです。
◆前向きに変換できる力をつける
私は何度も何度も、治らないこの病気にネガティブな感情を抱き、そのたび辛く悲しく治療の難しい病気だなと感じています。
でも今はこうして、この病気の一連の流れを通り抜けて
少しだけポジティブに摂食障害と向き合えている自分がいます。家族や友人も摂食障害であることを知っていますし、夫は摂食障害のよき理解者です。
私はいつも、今日は何を過食しようかな。
どんな映画を見ながら過食しようかな。
チョコレートは沈みやすいけど、今日はチョコレートが食べたいからチャレンジしてみよう。
吐けるかな?
吐けなかったらやだな。
でも、まぁいいっか。その時はまたチョコレートは2・3日食べないようにしよう。
吐くときは苦しいですし嗚咽している時間は楽しい時間ではありません。
でも、好きなもの思いっきり食べて少しだけ解放される時間がある。その事に気づき摂食障害の自分をなるべく否定せずに暮らしています。
不思議なことでその『自己許容』から『ポジティブな感情』が生まれてくるのです。
治らないからいいや、と諦めているのではありません。
治るか治らないか分からないけど、今私に必要なこと(過食)をしよう。という感じです。
それでいいと思っています。
食べたくないあなたも、過食してしまうあなたも、吐いてしまうあなたも、私も、みんな少しも悪くないのです。
悪いのはネガティブな感情、ネガティブな他人の意見、ネガティブな社会的価値観。
心の中でネガティブな気持ちが出てきたらダラダラとネガティブな自分に付き合わず、気持ちを切り替えるスイッチを考えましょう。ポジティブな思考を少しでも引き出せるようにするにも多少の訓練は必要です。諦めずにトライしてください。
摂食障害は生きるための手段にもなり得ます。
この病気で病んだり死んではだめですよ、
ネガティブになりすぎて更に心をだめにしては摂食障害以外の病気をどんどん患ってしまします。
摂食障害と長年向き合う中で摂食障害という病気は誰一人同じ症状ではないことを知りました。様々な環境下でひとりひとりが異なる症状や合併症に悩んでいます。ただ見てみるだけでは見ることのできない人間が考えも付かないほどいることを知りました。
それは個性以外の何物でもありません。
個性に良い、悪いはありません。
摂食障害を抱えた一人の人間で、それはあなたの個性なのです。
摂食障害であるということを悲観することはないと考えています。
摂食障害である自分をまずは受け入れてあげてください。摂食障害である自分を前向きに変換してみてください。
摂食障害を抱える人にとって、摂食障害は生きている証です。
摂食障害の自分を許してあげましょう。
そして必ず克服できるとまず信じましょう。自己否定を辞め、自己肯定感を身につけ、摂食障害を前向きに考えていく。
自己肯定感を強め摂食障害を肯定し生きていくのも一つの生き方ではないかなと思います。