過食症や過食嘔吐にかかる食費と月々の出費

目次

  1. 摂食障害の食費事情
    1-1. 過食症と過食嘔吐患者が直面する経済的な問題
  2. 過食症・過食嘔吐による食費の増加
    2-1. 過食時に選ばれる食べ物の種類と量
    2-2. 一回の過食にかかる平均的な食費はいくらか
    2-3. 過食頻度による食費の違い
  3. 月々の出費の増加
    3-1. 過食による月々の食費はいくらか
    3-2. 家計全体に影響する食費
    3-3. 食費以外のその他の隠れた出費
  4. 経済的負担による万引きや犯罪行為
  5. 結論:過食や過食嘔吐にかかる費用
    おわりに

摂食障害(過食症や過食嘔吐など)の患者が抱える問題のひとつが食費の問題です。制御できない過食行動や慢性化した過食嘔吐により、食費が大幅にかかり経済的な負担を抱えている人も少なくありません。
今回は過食症、過食嘔吐にかかる食費や月々の出費について書いていこうと思います。

1-1. 過食症と過食嘔吐患者が直面する経済的な問題

摂食障害を公表している芸能人の中には、自身が過去に摂食障害の症状でかかった費用が、家を建てるほどの金額に達したと語っている人もいます。一般的に、家を建てるために必要な費用は4000万円から5000万円程度でしょうか。摂食障害という病気に苦しみながら、さらに過食症や過食嘔吐によって大きな経済的負担がかかっている状況がよく分かります。
私自身も17年間の摂食障害の生活の中で、過食のためにかなりの金額を費やしました。家を購入するほどの額ではありませんが、少し高級な新車が買えるくらいは使ったと思います。私は実家が裕福なわけでもなく、社会的地位があるわけではなく、ただの一般人なので、過食にかかる費用は経済的な負担としてかなり大きなものとなっています。
そして過去の摂食障害による出費だけでなく、摂食障害が完治していない今もその出費は少しずつ積み重なっている。という現実を直視すると、時折目を背けたくなる気持ちになります。

2. 過食症・過食嘔吐による食費の増加

拒食症のときの食費は食べる量が多くないのであまり食費は掛かりませんでした。
ダイエット食品やサプリの費用は掛かりますが、通常の食費の分がそちらに当たっていましたのでプラスマイナスゼロ。しかし過食症や過食嘔吐はそうはいきません。
通常の倍、それ以上の食費の増加があります。具体的な金額を挙げると、通常の食費は一人暮らしで月3~4万程度でしたが過食によって増加した食費は6万~10万ほどまで膨れ上がりました。

2-1. 過食時に選ばれる食べ物の種類と量

過食症や過食嘔吐の人が好む食材は下記のような傾向にあります。

高カロリー食(例:ファストフード、揚げ物、スナック菓子)
炭水化物(例:米、菓子パン)
甘いもの(例:チョコレート、ケーキ、クッキー、アイスクリーム)
高脂肪食品(例:バター、クリーム、チーズなど)
加工食品(例:冷凍食品、インスタント食品、缶詰)


共通していることは味が濃く、手軽に食べやすい食品であることです。もちろん食べ物の好みがあるように過食する食材も人によってさまざまですが、過食症や過食嘔吐の人は予期せぬ過食衝動によって過食が始まるケースも少なくないので、調理に時間のかかる手の込んだ料理などは選びません。

一度の過食で食べる量は一般的な食事量の2~3倍。過食の量も人によって異なりますが、お弁当を2つ、甘い菓子パン3つ、スナック菓子3袋、デザート(プリンやアイスなど)4.5個。足りない場合はお菓子やデザートを追加。水分も大量に飲むので500mlのペットボトルを2,3本。
これらを一回の過食で一気に食べつくしてしまいます。

2-2. 一回の過食にかかる平均的な食費はいくらか

とにかく衝動的に過食行動を起こしておりましたので、昼夜問わず、過食スイッチが入ったらコンビニやスーパーに走り食べたいと思うもの全てを買いものかごへ放り込んでいました。
仮に先ほど挙げた食事量をスーパーで買ったとしたらだいたい2,000円前後でしょうか。
コンビニは手軽に買いに行けますがスーパーで買うより少し高くなるので同じ量を買っても3,000円を超えてしまいますし、過食衝動に任せて買っていると5,000円を超えることもありました。

◆一回の過食の買い物で使う平均的な金額
軽度の過食:2,000円〜5,000円
中程度の過食:5,000円〜10,000円
重度の過食:10,000円以上

2-3. 過食頻度による食費の違い

一度に2,000円~5,000円、と聞くとその程度か。と思うかもしれません。
ただ、過食症、過食嘔吐は継続して過食を続けていたり一日に何度も過食をしたりするため、食費はその都度増えていきます。過食の頻度は個人によって異なりますが、少ない人は週に数回、多い人は一日に数回、とさまざまです。

◆軽度の過食症患者の場合で考えると、
1週間に2回、過食衝動があれば毎週4,000~1万円。
1週間に4回の場合は毎週8,000~2万円。一日に1回の場合、毎週1万4,000~3万円。
単純計算ですが、過食の頻度によってどんどん食費は大きく膨れ上がっていきます。
過食症、過食嘔吐の人は“過食”という行為がやめられなく病気です。やめようと思えば思うほど過食に依存してしまい過食の頻度が増えていってしまうこともあります。
当然、食べるものはタダではないので過食をするだけ食費が掛かります。摂食障害者にとって、過食に掛かる食費は軽視できない大きな問題なのです。

3. 月々の出費の増加

一人暮らし社会人の一か月の食費は平均4万円だそうです。 この食費には、食料品以外にお弁当などの惣菜や飲料、外食の費用も含まれています。
過食症、過食嘔吐の人は食費+過食費用になるので月々の追加食費ももちろん増加します。
過食費用だけでどのくらいの出費になるのでしょうか。

3-1. 過食による月々の食費はいくらか

私の場合、過食のときは通常の食費予算+2万~3万ほどでした。
過食症のころは胃がはち切れるほど食べますが、その後は消化に苦しむ時間がありますので、ずっと食べ続けてはいられません。
怖いのは、過食嘔吐です。過食嘔吐は食べ過ぎて消化に苦しむ時間がありません。お腹いっぱいになったら吐いてしまえばまた食べることができます。
そしてまた吐く。食べる。吐く。過食をエンドレスに続けることが出来る状態なのです。
これって無限に食費が掛かってもおかしくないということ。

過食嘔吐で一日に何度も吐いていた時期は月に10万を超える額を食費に使ってしまったこともあります。1日に5000円使っていれば単純計算でも30日で15万円になります。実際にそのくらいの額を使ってしまったこともあったと思います。当時20代前半の私にとっては大金でした。

過食嘔吐についてはこちら
過食嘔吐は繰り返す: 慢性化する前に知っておくべきこと

下記は過食症や過食嘔吐の患者の重症度別の家計への負担です。

◆月々の出費への影響
軽度の過食:月に10回(週に2、3回)の過食で2万~6万円弱程度の追加出費
中程度の過食:月に20回(週に4、5回)の過食で7万~10万円程度の追加出費
重度の過食:月に20回以上(週に6、7回)の過食で10万円以上の追加出費

過食症や過食嘔吐がいかに食費に苦しめられるかが良く分かります。私の出費は軽度に当てはまりますが、たとえ軽度の過食の出費でも生活費を削り、日常生活を経済的に追い込んでいくものであることは間違いありません。

3-2. 家計全体に影響する食費

過食によってかかる負担は家計全体に影響を及ぼします。
まず、基本的な生活費を減らさなくてはいけません。過食にかかる食費が増えることで、家計の他の部分、例えば家賃、光熱費、交際費などの支出を削減しなければならない状態になります。
また貯金などの資産も減っていきます。将来のための資金が食費に使われてしまい、経済的な部分で将来設計に悪影響を及ぼすこともあるでしょう。

重度の過食の経済的負担に耐え切れずに借金をしてしまう人すらいるのです。
経済的な不安が家族や身の回りの人に広がり、まわりにも精神的なストレスを与えてしまうことも考えられます。

3-3. 食費以外のその他の隠れた出費

過食症や過食嘔吐の患者が抱える経済的な問題は、単に食費の問題だけではありません。摂食障害の治療費のほかに、さまざまな隠れたコストが発生します。

◆その他の出費 (例)
医療費と治療費‥摂食障害に関連した通院や薬代、カウセリング費用、嘔吐による歯科治療など
環境変化に関する費用‥摂食障害により学校や仕事に通えなくなり学費の支払い困難やお給料の減少などの間接的な金銭問題が生じる
隠れた支出‥ストレスや症状を隠すためにショッピングをしたり、外食や人との関わりを避けるために趣味などへの別の支出が増えたりすることがあります

4. 経済的負担による万引きや犯罪行為

過食によって食費の経済的負担に耐えることが出来ず、経済面でのストレスや不安を抱えやすくなります。過食症の患者は強い過食への欲求を抑えられないことが多く、その結果、万引きなどの犯罪行為が現れることもあります。
過食症や過食嘔吐の人は過食行動自体に対して罪悪感や羞恥心を常に感じていることが多く、お金に困っていることを他人に知られたくないという思いから、万引きをしてしまう場合があります。万引きを行うことでさらなる罪悪感やストレスを感じ、精神的な健康が悪化することもあり、社会的な信頼を失うことはもちろん、人間関係や職場にも悪影響を与えます。

5. 結論:過食や過食嘔吐にかかる費用

◆結論
軽度の過食行為で新車自動車が買えるくらいに積みあがる
重度の過食行為では新築一軒家が建てられるケースもある
過食症よりも過食嘔吐の方が食費は掛かる傾向にある
食費だけでなく隠れたコストも掛かる
お金に困り万引きなどの犯罪行為まで行ってしまうケースもある

◆おわりに

軽度の過食患者である私の過食費用は17年で500~600万くらいかな、と思います。
過食行為はとにかくお金が掛かります。
過食症、過食嘔吐は強い衝動による過食行為が抑えられない病気です。過食中はお金のことは考えられません。落ち着いて考えると使ってきた金額の大きさに今でも落ち込むこともあります。

でもあまり考えないように、考えるのは辞めるようにしています。過食費用は、私にとって必要な出費であったし、今もそうなのです。
私はひどい時は1日3回過食行為を行っていました。今は過食嘔吐が慢性化してしまいましたが、過食行為は1日1回と決めています。どうしても我慢出来ない日は2回することもありますが、食費を抑えるように、安易にコンビニで大量買いはせずにスーパーの値引きシールが貼ってある商品ばかりを選ぶようになりました。今では通常の食費内で抑えるように過食をしています。

何度も言いますが過食行為にはお金が掛かります。
過食症、過食嘔吐の人にはとても深刻な問題のひとつなのです。
ただそれは必要なお金だと思ってある程度、割り切らないと病気と付き合ってはいけません。
割り切れる範囲で過食、過食嘔吐行為を出来るようにコントロールすることもひとつの手段です。
買い溜めや衝動買いを抑えることが出れは必要以上の過剰出費は抑えられます。
簡単ではありませんが、長い目でこの病気と向き合う姿勢を身に付けることも大切です。

過食症とは?~過食症の現実~

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする