ダイエットと摂食障害の偏食は同じように捉われがちですが、これは大きな誤解です。
「摂食障害はただのダイエットの延長」という誤った認識は摂食障害を抱えた人へ誤った理解に繋がります。
実はダイエットと摂食障害は全くの別物。ダイエットと摂食障害は、根本的に異なる問題なのです。
分かりやすい違いとして、ダイエットは体重管理や健康維持を目的とした行動であるのに対し、摂食障害は食に関連した深刻な精神的健康問題です。
摂食障害には、強迫的な食行動、極端な体重コントロール、そして自分に価値を感じられなくなったり、強い自己否定が伴います。摂食障害は食事制限や体重の問題ではなく、個人の精神状態に深く影響を及ぼしている病気です。この記事では、ダイエットと摂食障害という同じようで全く違う現象をしっかり区別し、より摂食障害について一般的な理解を深めてもらえればと思います。
目次
- ダイエットと摂食障害についての4つの誤解
1-1.ダイエットは常に健康的であるという誤解
1-2.摂食障害はただの食事制限に過ぎないという誤解
1-3.摂食障害は簡単に克服できるという誤解
1-4.摂食障害は特定の体型の人にのみ発生するという誤解 - ダイエットの定義と目的
- ダイエットと摂食障害の違いを比較
3-1.目的の違い
3-2.症状と行動パターンの違い
3-3.心理的および身体的健康への影響 - ダイエットが摂食障害に変わる危険信号
これが出たら危険!5つの危険信号
◆おわりに
1.ダイエットと摂食障害についての4つの誤解
1-1.ダイエットは常に健康的であるという誤解
多くの人はダイエットを単純に体重を減らし、健康を向上させる手段と考えています。しかし、過度のカロリー制限や間違った食事制限で行うダイエットは、健康被害や摂食障害やへと発展する可能性があります。健康的なダイエットとは、バランスの取れた栄養摂取と適度な運動が不可欠です。
1-2.摂食障害はただの食事制限に過ぎないという誤解
摂食障害は、単なる食事の制限の問題ではなく、精神的健康状態の障害です。これには拒食症や過食症などが含まれ、単なる「過度なダイエット」という訳ではなく、強迫的で異常な食行動や極端な自己イメージの歪み、深い自己否定感が深く関わっていることがあります。
1-3.摂食障害は簡単に克服できるという誤解
摂食障害は心の問題であり、「食べるように(過食症の場合は食べないように)努力すれば良い」というものではありません。症状は長期にわたって心身共にダメージを与え、最悪死に至ります。治療には心理療法や場合によっては薬物療法、栄養指導が必要であり、回復には長い時間が掛かるとされています。
一時的に症状が落ち着いても数年後に再発したり、回復傾向にあっても症状を繰り返しやすく、慢性化することも多くあり完治するのは難しいのです。
食事に対しての専門的かつ精神的なサポートを受けながらゆっくりと克服を目指していく病気です。
1-4.摂食障害は特定の体型の人にのみ発生するという誤解
摂食障害を抱える人は見た目では判断できません。単純に痩せている人だけが摂食障害であると思われる傾向にありますが、標準的、または肥満体型の人も摂食障害を持っている可能性があります。摂食障害の根本的な問題は、体重や体型ではなく、異常な食行動と自己価値感に深く関係しています。
2. ダイエットの定義と目的
そもそもダイエットとは? “ダイエットの定義”
ダイエットとは一般的に体重を管理し、健康を向上させる目的で行われる食生活の調整や運動習慣を指します。ダイエットは余分な体脂肪を減らし体型を整えるため、もしくは健康上の理由(例えば高血圧や糖尿病のリスクを減少させるため)で行います。健康的なダイエットとは、栄養バランスを考慮した食事と適度な運動によって生活の改善を目指さすことをいいます。
ダイエットの本当の目的とは?
◆健康の改善:適切な体重の維持や健康的な食習慣を通じて、生活習慣病などのリスクを減少させる。
◆体力の向上:バランスの取れた食事と定期的な運動により、体力と代謝を向上させる。
◆精神的な健康:健康的な体重管理を通じて自分自身への自信を向上させることでストレスを減少させる。メンタルの向上。
3. ダイエットと摂食障害の違いを比較
ダイエットに対して、摂食障害は、食に関連した精神医学的な状態であり、食習慣が極端で非健康的であることが特徴です。摂食障害には、拒食症、過食症、過食嘔吐症などが含まれ、過度の体重コントロールをしたり、自己否定を繰り返したり、強迫的な食行動によって通常に食事ができなくなります。摂食障害の背後には、心理的な問題や環境が存在し、単にダイエットとして体重をコントロールすること以上の非常に複雑な問題を抱えています。
摂食障害についてはこちら。
目的と動機の違い
ダイエット…健康の向上、体形の改善のために体重を管理すること。通常、持続可能な方法で長期的に行います。
摂食障害…深い心の問題から過度な食事制限や、過食拒食といった極端な食行動が見られます。自尊心が極端に低下し、痩せることが目的になります。外見への過度の固執が動機で『瘦せていること』に対して価値があると考える傾向にあります。
症状と行動パターンの違い
ダイエット…健康的な食事と適度な運動により体重をコントロールします。バランスの取れた栄養摂取を心がけ、適切なカロリー制限を行う。目標は現実的で、健康を害することなく進められることが多い。
摂食障害…拒食症では極端なカロリー制限や断食が見られることがあります。過食症や過食嘔吐症では、コントロール不能な食べすぎの後に自己誘発の嘔吐が行われることがあります。食事や体重に対する強迫観念に悩まされ、日常生活に支障をきたします。
心理的および身体的健康への影響
ダイエット…適切に行われたダイエットは、体力の向上、病気のリスク減少、精神的な満足感をもたらし長期的に行うことによって生活の質の向上にも繋がります。
摂食障害…自尊心、自己肯定感が低下し、うつ病や不安障害を引き起こします。
身体的には栄養不足によって深刻な健康問題を引き起こすことがあります。回復が非常に困難で、長期的な医療介入が必要となることもあります。
4. ダイエットが摂食障害に変わる危険信号
ダイエットから摂食障害に変わっていく過程は、自分でも自覚がないうちに徐々に進行していきます。次の行動パターンが出たら危険信号。十分に注意が必要です。
これが出たら危険!5つの危険信号
◆食事量の極端な変化
食べる量が極端に少なくなる、または逆に非常に多くなる。
◆食事行為に対する強迫的な行動
食べ物を異常に小さく切る、食事の時間を異常に長引かせる、特定の食品のみを選んで食べるなど、食事に対する過度のルールや儀式がある。
◆体重と体型への過度の執着
鏡の前で長時間過ごす、体重計に何度も乗る、自分の体型について『太っている』など常に否定的な考えを持つ。
◆食事を避ける言い訳
「もう食べた」と嘘をつく、他者との食事や外食の場を避ける、食事を取らないような言動をする。
◆情緒不安定になる
食事に関連することに以上に怒りやイライラが増える、食べた後に極端に落ち込む。
おわりに
『痩せたい』という感情の始まりや減量の仕方だけを比べてみると、ダイエットと摂食障害は同じように思われがちですがこのように大きな違いが存在します。
摂食障害の人は『太りたくない』という感情がとてつもなく強いことが特徴です。
『もっと痩せていたい』
『太ることが怖い』
『太ったら人生終わり』
『太っている人間は無価値』
太っている自分の嫌悪感で鏡の前に立てなくなり、外出すら出来なくなることもあります。
これは単に『痩せたい』という気持ち以上のものです。太ること、太っている自分は無価値に等しく、自己評価が完全に体重と結びついています。
ダイエットは健康を目的とした減量である一方で、摂食障害による食事制限は精神的な負荷からくるものです。ダイエットは誰にでも受け入れらますが、摂食障害は深刻な精神疾患であることの認知度は低く理解されない事が多いため症状を隠してしまう人がほとんどです。
摂食障害の食事制限や過度な運動は単なるダイエットとは異なり、深い心理的な問題から来る行動です。食事をしたくない、食事ができない、食事という行為がわからなくなる。これが摂食障害の食事異常です。
「食べてはいけない」「吐いてリセットしたい」といった思考が常に頭を巡っています。
これがダイエットと摂食障害の根本的な違いです。摂食障害は健康へのステップではなく、精神的にも肉体的にも痛みを伴う深刻な病気なのです。摂食障害とダイエットの違いがもっと一般的に広く認知され、摂食障害を抱えた人が理解を得られる機会が増えることを願っています。
そしてもし自分が過度なダイエット思考を抱いていると感じることがあれば摂食障害に近づいているサインかもしれません。くれぐれも注意が必要です。
拒食症の現実~食事への極端な拒否~ – 摂食障害と前向きに闘う方法-ポジティブに過食嘔吐と生きる (kasyoku-plus.com)